数字で世界をつなぐ
ゲートウェイ
日本国公認会計士
キャリアサマリー
福井商業高校で簿記に触れたことをきっかけに、大学進学と同時に公認会計士を志しました。 数字を通じて物事を整理し、努力が成果に直結する世界に魅力を感じたことが原点です。
2016年度に公認会計士試験に合格し、2017年に有限責任 あずさ監査法人へ入所。 国際監査事業部にて、金融商品取引法監査、IFRS導入支援、IPO支援、内部統制監査などを幅広く経験しました。 四半期対応を含め監査ロールを一通り担い、上場企業のインチャージも任されました。
コロナ禍の収束を機に「リスクをとるなら若いうちに」と海外転職を模索し、 2023年よりGlobal Gateway Advisors Pte. Ltd.に参画。 現在はシンガポールを拠点に、クロスボーダーM&Aを中心とした財務・税務DD、FA、バリュエーション、 業務ソーシング、契約交渉、クロージング、PMIまで一気通貫で担っています。 現地特有の慣行に向き合う場面もありますが、それこそが現地に身を置くからこそ得られる醍醐味だと感じています。
「数字で整理し、意思決定につなげる」——その価値を、国境を越えた現場で実装することに面白さがあります。
監査法人における経験および、その後のキャリア選択のきっかけ
有限責任 あずさ監査法人では国際監査事業部に所属し、IFRS導入支援やIFRS適用企業に対する金商法・会社法監査、 内部統制監査などに従事しました。IPO監査にも関与し、上場準備企業への監査実務を通じて、 監査に求められる要件や期待値への理解を深めました。
担当先は数万人規模の大企業。表面的には整っていても内部では多様な意見が飛び交い、 正論だけでは簡単に組織が動かない現実を早い段階で体験できたことは大きな財産でした。 質問票の厳格な管理や過去のやりとりの引用など、机上では得られない「人を動かす力」を磨く機会にもなりました。
一方で、監査は「誤りを見つければ見つけるほど嫌がられる」という構造的な矛盾を抱えており、 努力がポジティブに評価されにくい側面があります。次第に「自分は何のためにこの仕事をしているのか」 という疑問が強くなり、企業の挑戦や成長に直接関わる分野で力を発揮したいと考え、 M&Aアドバイザリーへの転身を決断しました。
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在はGlobal Gateway Advisors Pte. Ltd.において、シンガポールを拠点にクロスボーダーM&A案件を 初期のソーシングからクロージング、PMIまで包括的に支援しています。 案件ごとにFA、DD実施、評価、PMIリードなど複数の役割を担い、日系企業・現地企業の双方をサポートしています。
業務の哲学として大切にしているのは「三現主義(現場・現物・現実)」です。 現地に行かず資料だけでレポートをまとめる“なんちゃってクロスボーダー”には強い危機感があります。 私は必ず現地に足を運び、経営者や従業員と直接対話し、文化や商習慣の違いも含めて評価・レポートに落とし込みます。
さらに、報告は最終的に日本語で完結させることにこだわっています。 現場で得た情報を自分の目と耳で確かめ、日本語で伝える——この一貫性が、意思決定の質を上げると考えているからです。 近年増えている「海外でキャリアを築きたい」会計士にとっても、現地に根差した経験は長期的な差別化要素になり得ます。
現場に行き、現実を見て、日本語で意思決定できる形にする——その積み重ねがクロスボーダーの価値を守ります。
あなた独自の強みと、今の仕事との関係性
私の強みは、困難な状況でも諦めず、粘り強く物事を前に進める実行力です。 クロスボーダーM&Aでは、予定通りに進まないことや文化・言語ギャップによる摩擦が日常的に起こります。 その中で必要なのは、責任を途中で投げ出さず、状況に応じて工夫を重ね、解決策を見出し続ける姿勢だと考えています。
たとえばタイで担当した「片道切符DD」の案件では、経理体制が脆弱でBSの貸借が合わず、 さらに言語面の制約や移動トラブルまで重なりました。それでも現場に足を運び、 必要な資料を一つひとつ押さえ、最後まで責任をもって報告をやり遂げました。
また、「同じ方向を向いて仕事をしたい」という価値観も大切にしています。 海外の現場では限られた言葉でも目的が一致していれば前に進む。 不完全な言語より、方向性の一致の方が価値がある——その実感が、プロジェクト推進力の源泉になっています。
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
最も心が動くのは、プロジェクトが実際にクロージングに至った瞬間です。 特に、海外進出経験のなかった企業がシンガポール案件を成約させたときには、 自分が交渉の窓口を担ったという実感とともに、言葉にできないほどの達成感がありました。
一方で、交渉が破談に終わることも少なくありません。 直前まで「いけそうだ」と思っていた案件が一瞬で消えることもあり、答え合わせができないまま終わることもあります。 成功の喜びと破談の落胆——その振れ幅の大きさは「0か100か」の世界の厳しさであり、同時に大きな魅力でもあります。
売り手FAとして交渉をリードした案件では、わずかな言葉や条件の違いが全体を左右し、 「数字の10億円」が現実の重みとして迫ってくる緊張感がありました。 それでも最終的にクロージングに至ったとき、監査時代に見ていた取締役会資料が 自分の仕事を通じて“投資判断”に直結していることを肌で実感し、経験がつながった感覚がありました。
成功と失敗の振れ幅に揺さぶられる感情こそ、いま本気でこの仕事に向き合っている証だと感じています。
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだことと、乗り越え方
監査法人時代に最も悩んだのは、努力すればするほどクライアントに負担を強いるという監査特有の矛盾でした。 正しいことをしているはずなのに、相手から警戒や不快感を示されることも多く、 「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という問いが頭を離れませんでした。
正直な答えは「乗り越えられなかった」です。監査の枠組みそのものを変えることは不可能だと悟り、 発想を転換して自分がフィールドを変えるしかないと考えました。 転職という選択を通じて、クライアントと同じ方向を向いて共に挑戦し成長できるアドバイザリーの道へ踏み出しました。
監査での葛藤は無駄ではありませんでした。その経験があったからこそ、自分のキャリアを見直し、 前向きに力を発揮できる場所へ進む覚悟ができました。いまの価値観を形づくった大切な礎になっています。
人生の目的と、公認会計士という資格
私の人生の目的を一言で表すなら、「将来の子どもたちに、今よりも良い社会を残すこと」です。 その実現において、公認会計士という資格は大きな力を持ちます。 会計士資格は世界中で信頼の証とされ、日本の公認会計士試験の専門性と厳格さは国際的にも評価されています。
この資格を最大限に活かし、人口減少や国力低下が避けられない日本において、 日本の企業や若い世代が積極的に世界へ挑戦できる場を広げたいと考えています。 私が果たすべき役割は、日本と世界をつなぐ「Gateway(玄関口)」を数多く創出し、 その挑戦を現実のものに導くことです。
挑戦しても戻れる。挑戦を支える仕組みがある——その安心感があれば、海外への一歩は確実に増えるはずです。
これから成し遂げたい事、将来の夢
これから成し遂げたいのは、若い世代がもっと気軽に海外へ挑戦できる社会をつくることです。 日本ではパスポート保有率が16〜17%程度にとどまり、「海外に出る」という選択肢が日常から遠いのが現実です。 この状況を変え、海外に挑戦することが自然で当たり前の社会にしていきたいと考えています。
そのためには挑戦の入り口を多様に整えることが重要です。長期の留学や駐在だけでなく、 短期で海外に触れる機会や、日本にいながら国際案件に参加できる仕組みなど、 段階的に挑戦できる道が複数あれば、一歩は踏み出しやすくなります。
そして、挑戦しても戻れる道があるという安心感も欠かせません。 私は公認会計士としての知識と経験を土台に、こうした環境を整え、 挑戦が特別ではなく当たり前になる未来を築いていきたいです。
